指先の記憶

ふとした瞬間に思い出す
伸ばした指の先にあった筈の影

普段はふざけて笑いあって
それで楽しく時間は過ぎてゆくけれど

隣に並ぶ人の気配に
すれ違う人並みに
漂う 鼻先を霞める香りに
寂しさが募ってゆく

不安に揺れる瞳を隠して
言葉を形として紡ぐ事をしなかった

凍った白い吐息に
重なった指先に
黄昏へと消えてゆく君の姿に

失った物の大きさを
噛み締めずには居られない