夢遊病

流れる 夥しい数字の羅列
流れる 無意味な言葉を紡ぐ音楽

飲み込まれる
闇の中 それとも光の彼方
解らない
名前は
家族は
家は
それすらも解らない

流れるのは大量の情報
好きな食べ物は
好きな色は
洋服の好みは
髪は黒かった 金色だった
ブラウン アッシュ プラチナ
身長は
体格は
顔は丸い それとも細長い

情報は情報でしかない
雑音に身をゆだね
世界をたゆたう
私は誰
私を象創る 物は何
私の情報は何処

流れる 流れる 流れる
情報の洪水
呑み込まれそう
迷子になりそう
否 もう迷子になってる

この森を抜け出せるのなら 何だってするのに

“ツ―――――――…”

笛の音が聴こえる
世界が暗転する
否 明るくなったのかも知れない
解らない


ああでも これは屹度終焉を告げる音
ひとつだけ解るの
私は 迷図を辿る病人じゃない
冥い森に遊ぶ住人