雨降る夜のために
雨が降る
熱い空気を冷やすように
雨が降る
雫は光る礫となって
私を 世界を 水に沈める
雑音のような雨音に心奪われ
瞑ったまぶたに雫が一粒
沈んで行くのは夢か現か
暁にぬれた紅が にぃと揺れた
前を見れば幾千の雨
後ろを見れば幾億の屍
下を見れば幾年の想い
上を見れば幾万の星
流れ流れて大河となって
流れの先は 今生か否か
流れの先に見えるのは
掬えなかった数多の手
雨が降る
熱い大気をとろかすように
雨が降る
雫は光る礫となって
私の 背中を 滑って消えた