dive into blue. [ act:The fruit. ]

更に雨足が強まり、空気が冷たく丸で氷室にいるやうだつた。
私は窓からすこうし顔を覗かして、滝のやうに白く線を引きながら降り続ける雨を眺めてゐた。
私は心を落ち着けて、雨音に耳を傾ける。
かたはらには雨避けに来た仔猫が體を丸め、ちひさな寝息を立ててゐる。

雨とは何と心地よいものだらうか。
私はこれまで己が行つてきた、罪ぶかい仕打ちの数々を思ひ浮かべた。
もし貴方が私の罪をあばかうと言ふのなら、私は悦んで罪をさらさう。しかし貴方は私の罪が白日の下に晒される事を懼れてなにも言ひやしないのだ。

私の枕元に立ち、我が罪を責め立ててはくれぬだらうか。

嗚呼誰か。

さすれば私は罪の証と共に消えてしまへるのに。